ヒロコアラカ記

Hiroko Arakaki / アラカキヒロコ の公式ブログ

やたら美味しそうな甘味を見てしまったがために

はじめに(iPadへの謝辞)

「横になって安静に」をすることになった。
では、と横になったままiPadを開く。
今更ながら、地味にiPadに感動する。横になったままこんなにも楽に何かを観ることができるなんて。画面自体が発光するので周囲の照度に煩わされることなく、また画面向きを固定できるので寝ながら眺めても読書だろうが映画鑑賞だろうが快適だ(Z世代にはポカンとされそう)。この奇跡のガジェットを、病床で本を読むのに苦労していたはずの祖父に半世紀前に渡してあげられたらどんなに役立ったことか。

甘味系ドラマ、魅惑のスイーツ

ともあれ、Netflixを開く。「休む」に相性が良さそうな作品を探したところ「さぼリーマン甘太朗」にたどり着いた。モーニング連載の漫画が原作のドラマ化作品である。サラリーマンが外回りの合間に美味しい甘味(スイーツ)を食べる話である。サボってるから休むにピッタリだし、甘いもの食べててすごく副交感神経がオンになりそうだ。
というわけで、1シーズン一気観をキメた。
毎回、尾上松也さん演じる無類の甘味好き(中毒)である主人公・飴谷甘太朗が、甘味を食しながらまるで麻薬か何か(甘いものを食べると脳内で麻薬と同じ報酬系が働くらしいのであながち遠くないかも(*1))を摂取したかのように白目を剥いてトリップし、そのあとにだいぶ正気を失った感じのサイケで自由な甘味礼賛の白昼夢(幻覚?)VFXが続く。これがかなりのくだらなさなのだが妙にクセになってしまう。
敢えて誇張してそういうキャラに描いているのだろうとわかっていても皆川猿時さん演じる上司・三宅部長のハラスメント気味な言動にはハラハラしてしまう。そんな自分の反応に、この作品が出た2017年から5年の間におけるポリコレ意識の劇的な変化を感じたりなどしつつ、
しかし何より悩ましいのは登場するスイーツ映像がすべて絶望的なまでに美味しそうだということである。フードポルノ選手権優勝である。
観終えてしばらくすると、どうにも食べられる状況ではないのに(むしろそれゆえますます)食べたい思いがばかりが募ってくる。遅効性のウイルスか。

食べたすぎて取り乱す

何軒か残念ながら閉店してしまったようだが、ドラマに出てきたのはすべて関東に実際にあるお店だ。
ドラマ内で主人公が綴っている設定のブログにも記事が残っている。

ameblo.jp

行けないのよ。私は今沖縄から出られないのよ。すごく理不尽な気がしてきた。
ああ、「紀の善」の抹茶ババロアが食べたい……!
思わず紀の善のサイトへ。
地方発送は都合によりお休み中とのこと。友人にお持ち帰りと郵送を依頼するという手もなくはないが、「あんみつや抹茶ババロアなど要冷蔵品のお日持ちは、冷蔵庫に入れていただいてお買い上げの翌日いっぱいです。」とある。691円の抹茶ババロアを、お日持ちギリギリアウトの可能性が高いのに1500円くらいかけてクール便で送ってもらうのもどうかと思う。それなら東京に行くときに店内で食べたい。神楽坂か。近くに住んでたのに今はこんなにも遠いな。「リュードパッシー」のエクレールもやはりテイクアウトできてもお日持ちは当日か翌日だろうな。「和栗や」のモンブランもイートインだけのようだ……

一回落ち着こう。
どれも鮮度が命のド生菓子なのだから、殆どオンライン販売はない(というかできないですよね)。そして絶対にお店で食べた方が美味しい。だから次に東京に行くとき絶対に食べるぞと心に誓う。あのドラマ、私に恐るべき宣伝効果を発揮しているぞ。

いや、沖縄にだって美味しい甘味処はたくさんあるさ、と思い直す。そうだよ。目下沖縄で絶品スイーツと邂逅できる喜びを噛み締めていこうではないか。

とはいえ、絶品の食べ歩きに精を出せるほどセレブではないし、頻繁な外出でコロナの感染リスクを上げるわけにもいかないし(そういえば私は先頃「基礎疾患を有する方」に仲間入りしたばかりだ)、それに飴谷甘太朗のような勢いで行脚すると糖尿病になりそうなので、
もっと、ずっと、だいぶゆっくりめで楽しめばいいや。
大幅にトーンダウンした。
甘味欲のメリーゴーランドを一周して我にかえった感じだ。

緊張あるところ、甘味あり(仮)

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のこれから登場するであろう後鳥羽上皇役が尾上松也さんだと知って、烏帽子姿の後鳥羽上皇がパフェを食べながら白目を剥く画が浮かんでしまった。登場が楽しみだ。
我が家では、歯磨きや犬の散歩と同じレベルで大河ドラマを観ることが生活の一部になっている。毎週ショックを受けながらも(仁義なく人が殺されすぎて)、作品のクオリティの高さに魅了されているところだ。
ふと気づく。
私たちは大河ドラマを観るとき毎回必ず、何かしら甘味を食べている。
あのドラマの主人公・北条義時は、(ほぼ毎週発生する)主要人物の謀殺を不本意ながら推し進めないといけない不憫な中間管理職的ポジションにいるわけだが、もしかして私たちは彼への感情移入で高まってしまう緊張を、無意識に甘味で中和しバランスをとっているのだろうか……

ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」を観た際、途中ハラハラしすぎて座って観ていられなかったあの時、美味しいケーキを一口食べていたらひょっとして落ち着いて観ることができたのだろうか……

と、そんなどうでもいいことを考えつつ終わります。

ちなみに、このところ何度か我が家で大河スイーツとなった美ら卵養鶏場の「濃厚たまごプリン」はとても美味しかったです。パウンドケーキもおすすめ。

churatama.base.shop


なお、何事も中庸やよし、ということで砂糖のとり過ぎにはご注意を(自戒を込めて)。

www.kanro.co.jp